本計画は、日本の環境配慮型建築技術とベトナム在来の建築手法を「水」というキーワードによって融合させ、熱帯都市での環境配慮型住居&カフェを実現させるものである。
このカフェは「現地で生活するもの」「現地を訪れるもの」等々、様々な交流拠点となる。計画プロセスにおいて一方向の技術移転ではなく、国籍年齢専門等様々な人々の技術を相互に提供し融合させる方法を用いた。
本計画は、日本の放置自転車をベトナムへ送り届けるという活動を通じ、ベトナムとの関係を築いてこられた事業主の「ベトナムに交流拠点となる『カフェ』を作りたい」という趣旨と、それに賛同した有志(日本人建築家及び建築を学ぶ学生、ベトナム人技術者及び運営スタッフ等)によって進められてきた。計画地はベトナム南中部、ユネスコの世界遺産に登録されている歴史都市「ホイアン」の川沿いの土地である。計画は2007年夏に始まり、2008年基本計画・基本設計、2009年実施設計・工事着工、2010年夏竣工・カフェ開業というスケジュールで進められている。
建築計画において、現地で普及している技術を活用することが建設コストを抑えることができ、しかも建物の維持管理においても有効であると捉え実践している。ホイアンの歴史建物を構成する素材や空間を取り入れ、歴史的な街並みに配慮している。また、長い年月の中でホイアンの人々が培ってきた風や水との付き合い方のエッセンスも積極的に取込んでいる。上記を1つの建物として融合することで、熱帯歴史都市での環境建築の1つのプロトタイプを実現した。
本カフェは、現地の若者の職業訓練の場であると同時に、地元の人々や世界から訪れる観光客の交流の場となる。ここでの環境配慮への取り組みを分り易く提示すことによって、来訪者の環境意識を刺激し、「Hoi An U-café」において様々な形の情報交流が行われることを期待する。